6.認知症だった母への罪悪感:セルフカインドネス

6.認知症だった母への罪悪感:セルフカインドネス

今回は、母の晩年を書きます。

 

母からの電話にびっくり

 

晩秋。

「天井に小さな大人が何人も歩いている」と母から電話がかかってきました。

父に電話を掛け直すと、「ここはどこ?なんで自分がこんなところにいるの?」、「家に帰りたい」とも母は言っていると知りました。

 

 

最初は、心配性の母のストレスが高じたのだろうと思いました。

しかし、ネットで調べると、母の言動は認知症の初期症状に限りなく近いものでした。

ショックでしたね。
足がすくんでしまいました。

慌てて実家に駆けつけました。

 

 

ミカンを投げつける母

 

物忘れ、怒りっぽい、今がいつかが分からない、ここがどこか分からない、家事ができない、テレビの映像の意味が分からない、、、、、。

診察を母に勧めるのですが、「自分は健康だ。自分のことを何だと思っているのか!」の一点張り。
しまいには、ミカンを私に投げつけます。
あの穏やかで優しい母がです。

いまから思えば、自分の変化に母は実は気付いており、不安だったからこそかたくなに診察を拒否したのでしょう。

 

 

初めて母が診察を受け入れてくれたときは、もう年が明けていました。

 

母は大病院は嫌がるので、小さな診療所に連れて行きました。

記憶テスト(?)と脳のMRI。

母を待合室に残し、私だけが医師に呼ばれました。

医師が言うには「記憶テスト結果は、健常者が10点ならば、お母さんは2点です」。

さらに、MRI画像を示しながら「脳のこの部分がかなり委縮しています」。

変かもしれませんが、この時点になっても認知症でなければいいと密かに期待している私でした。

しかし、記憶テスト結果とMRI画像を医師から突き付けられると、母が認知症だと認めざるを得ません。

辛かったです。

 

 

介護の日々

 

この時から、いわゆる介護が始まりました。

 

 

今から思えば、
「母が『安心して過ごせる』日常生活を送れるようにはどうしたら良いか」
を中心に考えればよかったのですね。

しかし、当時は、
「母の認知症の進行を遅らせ、『ちゃんとした言動』が続くようにはどうしたら良いか」
と考えてしまいました。

その結果、薬の服用を嫌がったりオムツ交換を嫌がったりする母に対して、私は叱ることが増えてきました。

母が嫌がる→私が叱る→母が混乱し不安になる→さらに嫌がる→私が叱る。
この悪循環ループに陥っていました。

先行きが分からない不安と共に、母をどうにもしてあげれない無力感と焦り。

この無力感に耐えられず、母を叱っていたのかもしれません。

母の不安な気持ちを忘れ、私のことを中心に考えていました。

 

数カ月が経ち、母に手を挙げるようになりました。

「何をするの!」

その母の声でハッと我に返り、母に「ごめん」と謝ります。

母は「いいえ、あなたは悪くはないの」と言い返します。

子供に手を挙げられ、それでも子供を許す母。

 

私、鬼です。

 

その間、私は罪悪感にとらわれていました。

母を安心させる対応をしていたら母はイキイキとした生活が出来たのではないか?

自分の母への対応は、逆に不安感を与えていただけではないか?

 

これではお互いがつぶれる。

 

 

介護施設に入居

 

母を施設に入れました。

最初は、自分が施設にいること自体に納得できず不安定な言動でしたが、次第に落ち着きを取り戻していきました。

二日に一回程度見舞う生活が数年続きました。

認知症が進むにつれ母は穏やかな表情になっていきました。

それが唯一の救いでした。

 

 

 

知症には役割があった

 

母は若いころから心配性でした。

しかし、認知症になってからは心配事を忘れたかのようでした。

その意味では、心配することを忘れるために、認知症になったのかもしれません。

 

母のことを思い出すたびに、自分の罪悪感が首をもたげます。

でも、与えられた状況の中で母によかれと思い頑張ったこともあります。

罪悪感を持ちながらも、一方で自分を慰めたいと思います。

 

ご自身を責め続けることに疲れる方がいらっしゃいましたら、
このサイトの固定ページ「1「自分自身に優しくする」(Self-Kindness)」をご覧願います。

 

 

 

 

 

 

こちらは、→「謎を究明する昭和オジサン」のサイト

 

 

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