こんにちは。
皆さまの地域、雪はいかがでしょうか?
こちらは、観測史上最大の雪とのことでした。
さて、今回は、実存主義小説家フランツ・カフカの手紙の一節を基にマンドフルネスについて考えてみます。
(画像引用:Amazon)
【目次】
1.僕ができることは、つまづくこと。
2.いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。
3.カフカの手紙の順序を逆にすると?
4.将来にむかって時間は流れているの?
5.倒れないための考え方とマインドフルネス.
6.セルフコンパッションに関する今までの投稿一覧
なお、仮面ライダーの「変身」という宣言(?)は、カフカの代表的小説の題名『変身』に由来するそうです。
(『仮面ライダーBLACK・RX超全集 完全版』小学館、1992年8月、p.102 YouTubeより)
(画像引用:Amazon)
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Contents
1.僕ができることは、つまづくこと。
カフカが恋人に送った『フェリーツェへの手紙』に、こんな一節があるそうです。
将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。
将来にむかってつまずくこと、これはできます。
いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。
最初は、ニヤリとしました。
世間から説教されることと真逆のことを正々堂々と恋人宛に書いているからです。
また、「いちばんうまくできるのは、」と、自慢しているみたいに感じたからです。
しかし、カフカ自身の状況を想像しますと、周囲との軋轢になすすべがないカフカの痛々しさが心をとらえます。
最初の2行は、どなたでもしばしば感じることがおありだと思います。
将来の目標を立て、目標に向かって歩んでも上手く行かないことが多いですから。
何度もつまづいて、自分が情けなくなりますね。
しかし、3行目が痛々しいです。
2.いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。
3行目の「いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。」。
これは、なかなか出来ることではないと思います。
うまくいかずに倒れたとき、
起き上がろうともがき、なぜ上手く行かないのか原因を考え、周囲にあらがい、不安になり、そのうち自信を無くします。
おとなしく倒れたままでいることができないのです。
アレコレと考えてしまうのです。
今の倒れている状態を否定し、どうにかしなければと焦るのです。
戸惑い、悩み、焦り、
周囲に訴えかけ、あるいは周囲に媚び、
結局は疲れて自分を無くしていきます。
こうなったら、倒れたままが長期に続きます。
カフカは、「いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。」。
私は、「いちばん自分がダメなことは、倒れたままでいることです。」。
同じく倒れたままであっても、その状態を一方は「うまくできる」と表現し、他方は「もうダメだ」と表現していますね。
この違いは何でしょう?
3.カフカの手紙の順序を逆にすると?
試しに、手紙の行の順序を逆にしてみました。
こうなります。
いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。
将来にむかってつまずくこと、これはできます。
将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。
まず一行目で、倒れたままの自分を肯定しています。
次の二行目で、自分が出来ることだけを記しています。
最後の三行目で、ようやく出来ないことが記されています。
「開き直り」というほど力強くはありません。
世間と折り合いを付けられないカフカ、心が弱いカフカを感じます。
でも、自分の現状を完全否定はせずに、「こんな僕だけど仕方ないよね」というささやかな自己肯定を感じます。
この「ささやかな自己肯定」はどこから湧くのでしょうか?
私は、「今の自分」に心を向けていることが「ささやかな自己肯定」の源泉ではないかと考えます。
・「将来にむかって歩くことはできない」という「今の自分」。
・「将来にむかってつまづく」という「今の自分」。
・「うまくできるのは、倒れたままでいる」という「今の自分」。
この「今の自分」を受け入れることが、「ささやかな自己肯定」につながっているのです。
だから、歩かなくてもつまづいても倒れたままでも良いのです。
倒れたままでいることが上手な方は、倒れたままかもしれません。
将来にむかってつまづく方は、これからも挫折が多いかもしれません。
しかし、それでもいいのです。
「今の自分」の現状をまずは受け入れてさえいれば、それでいいのです。
アレコレと考えることなく、まずは「今の自分」の状態を受け入れること。
これが大切です。
4.将来にむかって時間は流れているの?
そもそも「将来にむかって」という観念が西洋っぽいと思います。
私たち人間は将来にむかって生きなければいけないのでしょうか?
私たちを将来へと駆り立てるものとは何でしょうか?
「将来のため」「将来を考えて」「将来に向かって」。
「将来向かって時間が流れている」・「将来の為に今がある」というような概念は当然のことでしょうか?
これらの時間概念は、西洋的な感覚ではないでしょうか?
生物学、物理学、宗教学、教育学など幅広い領域の見識が必要ですので、答えはわかりません。
しかし、この時間の概念がお説教に当然のごとく使われるならば、私は違和感を感じます。
カフカがもしも東洋に生まれていたら、倒れずにすんだかもしれませんね。
5.倒れないための考え方とマインドフルネス
倒れたままでもいいとはいうものの、実際は辛いですね。
何年、何十年も倒れたままでは苦しいです。
そこで、できるだけ倒れないための考え方を私は持つことにしています。
それは、仕事でも日常生活でもどんなときでも、
「自分が運転する飛行機が上昇したり下降したりしながらも、地面すれすれでもいいから、今さえ落ちなければいい」。
と考えています。
「立派に飛ばなくても落ちそうになっても、今とりあえず飛んでいたら十分」という心持ちでいますと、落ちたり倒れたりが少なくなりました。
肝が据わるとでもいえばよろしいでしょうか、落ちたら落ちたでその時に対処すればよいと思えるようになりました。
「今さえ飛んでいたらいい」との考え方はマインドフルネスに通ずると思います。
6.セルフコンパッションに関する今までの投稿一覧
最新ブログ → http://tsunami2013.org/
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10.対話は、理解よりも共感が大切! -書籍と映画を通じて-:マインドフルネス
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25.何を言われたって平気(ホイットニー・ヒューストンの曲):セルフカインドネス
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