こんにちは。
今回は俳句から感じたことを記します。
【目次】
1.じゃんけんで負けて蛍に生まれたの
2.この句の面白い点
3.じゃんけんで勝っていたら、何に生まれたのかなあ?
4.お遊びで何に生まれるかが決まり、私、蛍に生まれてしまったのです
5.マインドフルネスとコモンヒューマニティーとの関連
6.おまけ:同僚はどの句を選んだか?
7.セルフコンパッションに関する今までの投稿一覧
Contents
1.じゃんけんで負けて蛍に生まれたの
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの
池田澄子さんの俳句です。
「夏井いつき俳句チャンネル(YouTube)」で、この俳句を知りました。
→【文体と表記①】文語と口語のニュアンスの違いとは?(20201108配信)
スピーチに困ったら、こちらのサイトをヒントに。
最初は、字余りか自由律のように感じました。
ところが数えてみると、ちゃんと(?)音は5・7・5です。
口語に惑わされたのかもしれません。
(蛇足ですが、、、)
促音(っ)は1音と数えますが、拗音(ゃ・ゅ・ょ)は数えません。
したがいまして、「じゃんけんで」は5音です。
2.この句の面白い点
この句が面白いのは、次の点にあると思いました。
1.じゃんけんという「お遊び」で、何に生まれるかという重大事項が決まったこと。
2.じゃんけんに「勝って」ではなく、「負けて」しまった結果を詠んでいること。
3.他の生き物ではなく、「蛍」に生まれたこと。
4.これから「生まれるの」ではなく、「生まれたの」と現在を詠んでいること。
1番と4番は、後でまとめて感想を書かせていただきます。
まずは2番と3番から書きます。
3.じゃんけんで勝っていたら、何に生まれたのかなあ?
蛍について調べました。
寿命は1年。
水の中で幼虫として10カ月生き、光を放ち乱舞する成虫になってからは1~2週間で亡くなります。
幼虫時代にはタニシなどを食べますが、成虫になると口が退化し水しか飲めません。
幼虫時代に摂った栄養で、成虫の2週間を生き延びます。
水しか飲めないから、こんなわらべ歌が出来たのですね。
ほ ほ ほたるこい
あっちのみずは にがいぞ
こっちのみずは あまいぞ
ほたるこい (作曲 小倉朗)
他にも、蛍は各作品のモチーフになっていますね。
・唱歌「蛍の光、窓の雪」
・後拾遺和歌集「おともせで思ひにもゆる蛍こそ なく虫よりも哀れなりけれ」
・小説および映画「蛍川」(宮本輝)→ウィキペディア
さて、じゃんけんで負けたから蛍になったのは、成虫としての華やかな時期が2週間と短いからでしょう。
「きれい!」ともてはやされる期間が、人生の20分の1なんてちょっと可哀そうですね。
では、じゃんけんで勝っていたら、何に生まれたのでしょうか?
サンマなどはいかがでしょうか?
じゃんけんで勝ってサンマに生まれたの
他には、
じゃんけんで勝ってキリンに生まれたの
じゃんけんで勝って女に生まれたの
じゃんけんで勝ってイルカに生まれたの
じゃんけんで勝って桜に生まれたの
勝っても負けても、何に生まれても、私たちは生きていけるんだなあと思いました。
現代俳句協会サイト→「第36回現代俳句協会賞受賞作 池田澄子」
4.お遊びで何に生まれるかが決まり、私、蛍に生まれてしまったのです
じゃんけんの勝ち負けは、偶然ですね。
偶然によって蛍に生まれることが決まりました。
そして、この句は、蛍に生まれる前ではなく、蛍としてこの世にいる時期を詠んでいます。
「偶然」と「現在」を詠んでいるということになります。
蛍を擬人化するならば(=実際に詠み手は人間です)、人は偶然生まれ現在に生きています。
この一瞬、この刹那を詠んだのがこの俳句だと思います。
今生きていること、
偶然蛍として生まれてきたこと、
このことは、愛おしい感じがしませんでしょうか?
5.マインドフルネスとコモンヒュマニティーとの関連
蛍に生まれたならば、蛍として今を生きるだけ。
サンマに生まれたら、サンマとして今を生きるだけ。
過去がどうだろうが未来がどうなろうが、今に集中。
今ここを大切に。
これが「マインドフルネス」の発想。
蛍もラクダもコスモスも人もクジラも雷鳥も生きている。
じゃんけんに勝って生まれたのか、あるいは負けて生まれたのか分からないけど、生きている。
みんな一緒。
これが「コモンヒューマニティー」の発想。
6.おまけ:同僚はどの句を選んだか?
実は、このブログを書く前に同僚二人に質問しました。
池田澄子さんが詠まれた有名な俳句があるけど、どれが本当の句だと思いますか?
1.じゃんけんで負けて蛍に生まれたの
2.じゃんけんで負けてトンボに生まれたの
3.じゃんけんで勝って蛍に生まれたの
4.じゃんけんで勝ってトンボに生まれたの
1~4の中でどれが本物でしょうか?
お二人が選んだのは、3番と4番でした。
勝気なお二人でした(?)。
これからは、このお二人には逆らわないことにしますね。
7.セルフコンパッションに関する今までの投稿一覧
最新ブログ → http://tsunami2013.org/
5.母を亡くしました:コモンヒューマニティー・マインドフルネス
8.罪悪感と怒りとは同じものかもしれません:セルフカインドネス
9.悲しみは誰でも持っている。『でんでん虫の悲しみ』(新美南吉):コモンヒューマニティー
10.対話は、理解よりも共感が大切! -書籍と映画を通じて-:マインドフルネス
11.「自己責任論」を「セルフコンパッション」で乗り超える:セルフカインドネス
12.自分の思い込みを知って、楽に生きよう!:マインドフルネス
13.映画「ありがとう、トニ・エルドマン」にみる父と娘:マインドフルネス
14.気持ちを素直に伝える。これがアサーションという権利:マインドフルネス
15.押してもダメなら引いてみな。「逆櫓の構え」:セルフカインドネス
16.コミュニケーション能力が低いのは誰だ?:セルフカインドネス
18.心を開いて~ZARDの歌詞から思ったこと:コモンヒューマニティー
22.大人の願いと、子どもの受け止め方:コモンヒューマニティー
23.想像力(再度、でんでん虫の悲しみ):コモンヒューマニティー
25.何を言われたって平気(ホイットニー・ヒューストンの曲):セルフカインドネス
32.コロナの負の連鎖を断ち感謝や支援を:コモンヒューマニティー
33.過去は変わらない。でも、過去の解釈は変えられる:マインドフルネス
34.谷川俊太郎さんの「いま生きているということ」:マインドフルネス
35.だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。